声優という仕事がメジャーになるにつれて、よく耳にするようになった「アフレコ」という言葉ですが、アテレコ、プレスコという言葉もあります。
YouTubeでも滑舌を良くする方法の説明をしています!↓
「アフレコ」「アテレコ」「プレスコ」の違いはどのようなものなのかを紹介します。
声優になるために、アフレコの練習をしたいけど、どうやって練習すればいいのかわからないという方に、自宅でアフレコの練習をするための7ステップも紹介します!
1)アフレコって何?
似てるし間違いやすいよね!
アフレコとアテレコ、プレスコもあるから
それぞれの違いを説明するね!
【1】アフレコとは元からある映像に音を当てること
「アフレコ」「アテレコ」「プレスコ」という言葉は声優業界では当たり前に使われています。
「アフレコ」というのは「アフターレコーディング」の略称です。
文字通り、音声を後で収録することを言います。
収録の方法で、同じ声をあてる作業でも呼び名が異なるというです。
【2】「アテレコ」との違いは?
アテレコは、「映像に声を当てる」という意味からできた言葉です。
つまりアフレコの一種ということです。
映画の吹き替え、アニメの他、特撮テレビドラマなどの声をあてることを「アテレコ」といいます。
アフレコとアテレコは、大きな差はないと思ってOKです。
他にも「プレスコ」という言葉も存在します。
「プレスコアリング」の略称で、アフレコの逆の意味です。
つまり、先に声を収録して後で映像をつける作業を言います。
映画の吹き替えは、すでに映像がある状態で収録しますので、「アフレコ」での収録となります。
アニメの場合、絵ができていない状態での収録があることもあるようです。
アニメの絵が間に合わない場合、通常は線画といって、色分けされた線での映像に合わせてセリフの吹き込みをします。
ただし、その線画も間に合わない場合もありますので、その時はプレスコで収録するということもありますよ。
2)アニメ声優のアフレコ
【1】スタジオにマイクは3本が主流
アニメのアフレコでは、都内のスタジオで収録されることがほとんどです。
スタジオには、スタッフ用ブースと収録用の防音室があります。
防音室は、かなり厚い扉で区切られており、スタッフさんから見えるようガラスで仕切られていることが多いですね。
防音室に入ると、大抵のスタジオがマイク3本くらいが主流です。
マイクの後ろに声優さんが控える椅子が置いてあります。
【2】入れ代わり立ち代わりでマイクを使う
アニメのキャラクターは、3人以上の場合が多いです。
そのため、マイク3本を入れ代わり立ち代わりで利用します。
自分のセリフでないときは、後ろの椅子に座って出番を待ちます。
ナレーションの場合には、1本のマイクで、座っての収録がほとんどですよ。
ココがポイント
アニメの場合(外画もそうですが)、入れ代わり立ち代わりでマイクを利用するので、1本のマイクを固定で使うことはほとんどありません。
「マイクワーク」とは、マイクに入る位置を変えながら、入れ代わり立ち代わりをスムーズに行えるようにする動作を言います。
3本あるマイクのうち、基本的には誰も使っていないマイクに入ります。
収録前にテストで1回流すので、どこのマイクが空いているのかをよく見て、どのマイクに入るべきなのかを台本に書き込む人が多いです。
もし、スムーズに入れ代わりができない場合には、口頭で打ち合わせて、別のマイクに入るように修正することも必要です。
【3】ベテランのマイクが設置されていることも・・・
アニメの場合はレギュラーで出演する人の中でも、ベテランの声優さん用のマイクが1本あることもあります。
また、超絶長いセリフを収録する場合もそうです。
他の声優さんが利用できるマイクを残り2本で回すこともありますよ。
ココに注意
知らずにうっかりベテランのマイクに入ってしまうと、大変なことになることもあります。
空気を読む力も必要ですね。
【4】ヘッドホンや時間の表示はない
アニメのアフレコは、基本的にヘッドホンはつけずに行います。またアニメの場合画面の上は、時間の表示は出てきません。
キャラクターの口パクに合わせてセリフを発します。
絵がなく、線画の状態の時には、自分の役がしゃべる時間だけその色の線が画面に表示されます。
マイクワークで自分が入るべきマイクの前に立ったら、素早くマイクとの距離を取り、芝居をすることになります。
3)外画の吹き替えのアフレコ
外画の吹き替えでも基本的なマイクワークはアニメと同じですが、外画の場合には、海外の俳優さんの演技に合わせたセリフのアフレコを行います。
そう!吹き替えの場合には、時間の表示がでてくるよ!
【1】外画の吹き替えの場合は時間表示がある
外画の場合、アニメとは違い、すでに海外の俳優さんが演じたものが完成されています。
そのため、アフレコのときには画面の上部に時間表示があります。
自分の役のセリフが何分何秒から始まるのかをあらかじめ台本に書き込んでおき、その時間表示に合わせて収録していきます。
【2】原音を聴くためのヘッドホン
外画の吹き替えのアフレコは、海外の俳優さんの声(原音)を聴きながら行います。
スタジオにもよりますが、片耳のヘッドホンやイヤホンをつけて収録します。
ヘッドホンが片耳だけなのは、ヘッドホンをあてていない方の耳で他の声優の演技を聴くためです。
今はワイヤレスのヘッドホンのスタジオが多いですが、有線のヘッドホンであることもあります。
そのため、外画の吹き替えではマイクワークをかなり上手くやらないとケーブルが絡まってしまうこともありますよ。
4)声優がスタジオでのアフレコで注意していること
次は実際の収録現場でアフレコするときに注意していることについて説明しますね。
このあと紹介するアフレコ練習でもその注意点も取り入れると実際の現場でも役に立ちます。
【1】アフレコ中は静かに
スタジオのマイクはコンデンサーマイクといって、とっても高額なものです。
コンデンサーマイクは、ちょっとした物音もしっかり拾う性能も抜群のマイクです。
そのため、咳払いとか椅子の音などまで全部収録してしまいます。
声優が控えの椅子に座るとき、立ち上がるときには特に細心の注意を払います。もちろん声を出すのは演技をするときだけですから、しゃべることはできません。
【2】アフレコのときの服装
先ほど、アフレコのときには演技以外の音を極力出さないように注意するとお伝えしました。
演技以外の音とは、控えの椅子の立ち上がりなどだけでなく、声優がマイクに向かうとき、台本をめくる音などもあります。
声優側は足音などは当然ですが、着ている服でシャカシャカいう音(衣擦れ)などの音にも注意しています。
ナイロン製の上着とかは着ている声優さんはいませんね。
アフレコのときには「極力音が出ない」ということを意識して服装も選んでいます。
【3】靴の種類にも注意
ノイズを立てるからということもありますが、アフレコのときの靴も声優は気をつけている人が多いです。
スタジオの中は、足音を消せるようカーペットのことが多いです。
ただ、身長に合わせてマイクの高さを調節するため、身長が低めの声優はヒールがあって、ある程度高さが調節できるような靴を履いて工夫しています。
身長が高い声優さんは、膝をまげてしゃがみ、マイクの正面に口元がくるように調整します。
【4】リップノイズがならない工夫
声優がセリフを発するときに、ナ行やパ行など、口を開くときに出る音をリップノイズと言います。
人間なので、ある程度リップノイズは出るものではありますが、緊張すると口が渇いてさらにリップノイズが出やすくなります。
水を飲むことやリップクリームでなるべくリップノイズが鳴らないように工夫する声優は多いですね。
ココに注意
声優としては、音声編集の方の負担にならないように極力ノイズを出さないように配慮することも重要です。
5)アフレコの練習のポイント
意欲があって素晴らしいよ!
練習のポイントがいくつかあるから
紹介するね!
【1】マイクワークは1人で練習は難しい
マイクワークは、声優養成所でも実習のときに勉強します。
アニメや外画の収録では、何人もの声優さんと共演することもありますが、それを1人で練習するのは難しいでしょう。
マイクワーク自体は声優養成所のレッスンや実際のスタジオで学んでいく人が多い印象です。
【2】マイクとの距離を練習する
それでも、一人でマイクの使う感覚を練習することはできますよ。
自宅でマイク代わりのスタンドのようなものを作って練習してみましょう。
自宅でマイクを使って感覚を掴んでおけば、実際のスタジオでのマイクワークに意識を向けることもできやすくなりますよ。
(1)マイクとの距離は基本30センチ
基本的なマイクとの距離は30センチと言われます。
このマイクに声が届かないようなら、発声の練習を積み重ねることをおすすめします。
用意するのはスマホとスタンド替わりのものがあればOKです。
実際のスタンドでももちろんOKです。
スマホには、録音アプリがあるので、ダウンロードして準備します。
(2)大声のときと小声のときのマイクの距離が違う
実際のスタジオでは、遠くから声をかけるときには、マイクから30センチの距離ではなく、さらに離れて声を出します。
マイクまでの距離が近すぎると、音が割れてしまい、セリフが聴き取れなくなります。
マイクの性能にもよるので、スタジオではスタッフさんから「もう少し離れて」「近づいて」などの指示があることもあります。
小声のときには、30センチよりも少しマイクに近づいて声を出します。
小声のときにはウィスパーというテクニックがあります。
ココがポイント
実際の小声にしてしまうと音圧が足りずにマイクが音を拾わないので、小声よりも張った声を出すのがウィスパーです。
これもスマホで録音すると感覚が分かります。
【3】養成所にいるならスタジオレッスンを利用しよう!
養成所には、スタジオが設置されていることもあります。
レッスンで、スタジオを使った実習がある場合もありますね。
スタジオでなくても、マイクを使わないでスタンドだけでマイクワークを練習することもできます。
何もかも一度に感覚を掴むことは難しいので、自宅での練習と養成所のレッスンをうまく利用して感覚を掴んでいきましょう。
6)自宅でできるアフレコ練習7つのステップ
自宅でアフレコ練習を
するためのステップを
一つずつ説明していくよ!
自宅でできるアフレコの練習には限りがありますが、マイクとの距離感や台本の持ち方など、練習できることもたくさんあります。
自宅でできるアフレコ練習の7ステップを紹介していきますね。
【ステップ1】台本を準備しよう!
まずは台本の準備です。
ほとんどの収録では台本を事前に渡されることが多いですが、場合によっては差し替えや収録当日に渡される場合もありますよ。
台本は、ほとんどが開いた状態でA3かB4の大きさです。また、縦書きのことがほとんどですね。
練習でもその形式に近いほうがいいので、縦書きの台本を準備します。
それを片手に持って、横目で台本を見ながら演技をします。
顔はマイクの方を向きます。台本の方を向きすぎると音声が入らないので注意しましょう。
【ステップ2】マイクスタンドに近いものを準備しよう!
うちにあるもので、マイクに近いものを準備しましょう。
自分の口元に高さがあればOKです。
安スタンドがあればそれでももちろんOKですよ。
もしスタンドらしきものがなければ、柱などに印をつけて、それをマイクスタンドに見立ててもOKです。
【ステップ3】マイクを固定しよう!
自宅にマイクがあるという方は少ないと思いますが、スマホは結構持っている方は多いでしょう。
スマホには録音機能も付いていますから、有効活用しましょう。
それをマイクスタンドもどきに固定します。
固定の方法は、洗濯ばさみやクリップなど自宅にあるものを使って工夫しましょう。
【ステップ4】マイクの高さをいろいろ試そう!
スタジオのマイクは、3本のうち、1本が標準の高さ、1本は低め、1本は高めとその日に集まった共演者の身長によって調整されます。
ココに注意
自分が標準の高さのマイクに入れるならいいですが、マイクの空き状況によっては、低め、高めといろいろな高さのマイクに入る必要が出てきます。
スマホの位置を調整して少し低め、少し高めのマイク位置も想定して練習してみましょう。
低めのマイク
足を前後に開いて、少し腰を落とします。
少し前傾姿勢でマイクの延長線上に口元がくるように姿勢を作ります。
マイクとの距離がなるべく30センチに近くなるように姿勢も調整しましょう。
中腰の姿勢なので、長時間はキツイと思います。
高めのマイク
実際の現場では、自分の身長とかけ離れたマイクにはあまり入らないようにします。
しかし、共演者との兼ね合いでどうしても高めのマイクに入る必要がある場合には、少し背伸びする状態になります。
安定感があまりない姿勢なので、演技に支障が出るようなら、実際の収録の場合には共演者に相談します。
自宅ではその感覚だけ掴めればOKです。
女性ならヒールがある靴を履いて、少し高い位置に口元がある状態も試しておくといいですよ。
【ステップ5】マイクとの距離をいろいろ試そう!
マイクとの距離は基本は30センチですが、大きな声を出す時は、30センチよりも距離を長くとります。
小声の演技の場合は、その逆でマイクに少し近づきます。
ココがポイント
人によって声の性質が違うので、良く響く声なら基本の距離を30センチよりも長くとることもあります。
【ステップ6】録音して聴いてみよう!
スマホの録音機能を利用して、実際にセリフを言ってみて、どんな音になっているのか確認しましょう。
大きな声を出したときに、音が割れているようなら少しマイクとの距離が近すぎます。
小声のセリフで音が小さい場合は、マイクとの距離が長すぎるか音圧が小さすぎるということです。
また、リップノイズやマイクを吹く音が入っているなら、スマホにティッシュを一枚つけて同じようにやってみてください。
それでもリップノイズが入るなら、口の中が乾きすぎていることが原因です。
どうしてもマイクを吹いてしまう場合は、口の向きを少しそらして回避します。
【ステップ7】友達と集まってやってみよう!
基本のマイクの入り方は、先にマイクに入っている共演者が台本を持っていない方からです。
例えば、先に入っている人が右手に台本を持っているなら左から、左手に台本を持っているなら右からとなりますね。
1人ではマイクワークの練習はできないので、声優養成所の仲間や友達と集まって練習することもできますね。
また、セリフの途中で、待機している人の咳払いが入ったり、歩く音が入ってしまったらNGです。
ココがポイント
台本をめくる音を防ぐ方法としては、台本をいったん下げて、めくってから元の高さに戻します。
次のページのセリフが短いなら、めくらずに前のページに続きのセリフを書いておくのもおすすめですよ。
せっかくの機会ですからスタジオの本番さながらにやってみましょう。
7)マイクワークよりも大切なこと
ここまで、アフレコの練習方法を解説してきましたが、自宅で練習できることには限りがあります。
一人で練習するときは、マイクとの基本距離の間隔を掴むことに注力することをおすすめします。
マイクワークに関しては、複数人で練習する必要がありますので、養成所のスタジオレッスンや仲間で集まっての自主練を活用しましょう。
マイクの使い方やマイクワークも大切ですが、それよりも大切なことも多くあります。
声優養成所のスタジオ実習では共演者が同期の仲間なので、あまり緊張せずに演技やマイクワークを存分に学びましょう。
【1】声優の世界のルール
スタジオでは、3本のマイクがあり、その後ろに控える椅子があることは説明しました。
新人声優の場合、スタジオでの立ち振る舞いが、その後の声優としての仕事に影響が出ます。
まず椅子に座る位置ですが、上座と下座の理解が必要です。
スタジオの入り口に近い方の椅子は下座です。入口から遠い椅子が上座となります。
ココに注意
上座は目上の人が座る位置ですから、新人のうちに座ることはないでしょう。
うっかり上座の椅子に座ってしまうと、「礼儀を知らない失礼な新人」と思われてしまいますよ。
また、新人声優は、スタジオに一番乗りで行くくらいがちょうどいいです。
先輩よりも先に来て、先輩が来たらきちんと挨拶することも忘れずに。
見学をさせてもらえることもあるでしょう。そのときに雰囲気になじむことも重要ですよ。
見学をするときには、収録中には絶対に音を立てないこと。
携帯の音が鳴ってしまうことのないように、電源はオフにするのは常識です。
【2】声優としての演技力
スタジオでの初仕事は本当に緊張します。
初めての仕事のときは、声も上ずって、普段の演技の60%くらい出せればいい方です。
緊張していても、及第点の演技ができる最低限の演技力を身に着ける必要があります。
ということは、普段は120%くらいのつもりで演技しておいた方がいいですね。
集中力も必要ですし、周りを見て動くことも必要なのです。
よく「役に入り込む」なんて言いますが、役に集中しすぎると、マイクに入りそびれた!なんてことにもなりますよ。
声優の仕事は、冷静に周りを見て動き、セリフを言う時だけは役になり切るというマルチタスクの能力も必要です。
【3】ノイズが出ないように工夫しよう
途中でもご紹介しましたが、スタジオのアフレコ用マイクは高額で、小さな音も拾ってしまいます。
プロの声優は椅子の音や咳払いはしないようにするのが当たり前で、服装にも気をつけてアフレコにのぞみます。
ノイズがあまりにも多い声優は、音声編集のミキサーさんから嫌がられてしまい、仕事が来なくなる可能性もあるくらいです。
演技だけではない、声優としてのプロの仕事もできるようにしておきましょう。
【4】学ぶよりも「慣れ」
新人のうちは失敗もたくさんします。
スタッフさんや共演者に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
だれでも初めてのときはありますし、緊張しないはずはありません。
アフレコの技術は、失敗しながら、慣れていくものでもあります。
学ぶよりも「慣れ」が大切ですね。
まとめ
私もはじめは失敗してきたよ。
でもそれも経験!
新人が通る道
私も初仕事のときは失敗続きで、普段通りの声が出ず、「声が小さい」とスタッフさんから指摘されました。その日は落ち込みましたが、それも新人声優の通る道です。
失敗するのは今でも怖いですが、それでも仕事のときには気持ちを切り替えて集中します。
アフレコの練習をすることで、緊張していても普段に近い状態で演技に集中することができるようになりますし、自信にもつながります。
マイクワークや演技力も大切ですが、自分のメンタルコントロールをすることも非常に重要です。
前向きに、失敗してもめげない自分を作っていきましょう。