「声優は影の存在」と言われ「裏方のイメージ」が蔓延していた時代は終わりを告げ、現在は「歌って踊れるアイドル声優」から「ドラマ」や「映画」に出演する「声優」も多くなってきています。
これは「声優」という枠が取り払われて、仕事の幅が広がってきていることのあらわれでしょう。
そしてその幅はこれからも大きく広がると思います。
ですが、仕事の幅が広がっても土台は変わりません。
「声優の仕事」の土台、それは「声を使って演じること」です。
今回は土台となる声優の仕事を大きく5つに分けてご紹介します。
「声優」を目指すなら、声優の土台となる仕事を知っておきましょう。
【仕事1】アニメ
まずは皆さんもよくご存知のアニメのキャラクタターに声をあてる「アニメーションの仕事」です。
この仕事がしたくて「声優」を目指す方も多いでしょう。仕事の案件数が最も多いのがこの仕事になります。
「声優」になったら必ず通る仕事、それが「アニメの仕事」です。この仕事には重要なスキルが必要になります。
それは「想像力」です。
ココがポイント
まず知っていただきたいのは、「アニメの収録」で「画」がすべて出来上がっていることはほぼないということです。
普段、皆さんが見ている「アニメ」のように「画」がすべて出来上がっている状態での収録はまずありません。
「アニメ作品の制作」というのは本当に多忙を極めます。
背景やキャラの表情、動きを何枚も何枚も書き続けなければなりません。
そのため、収録までに「画」を仕上げることはとても難しくなります。
となると「声優陣」は「画」が出来ていない状態の中で声をあてることになります。
「画」が出来ていない状態を簡単に説明すると、「白バック」に「丸や線」で書かれたキャラが映し出されるような形です。
「ペラペラマンガ」みたいなイメージというとわかりやすいでしょうか。
また「オバケ」と言って本当に何も「画」がない状態で声をあてることも多々あります。
たとえ「画」がない状態で収録しても、オンエアされる映像のキャラは、当然飛んだり跳ねたり動いていますよね。
この時、動いているキャラと声にズレが生じてしまったら作品は台無しです。
そうならないよう「想像力」が必要不可欠なのです。
キャラが飛んだり跳ねたりしていることを想像して演技をする。
「アニメの仕事」というのは、ただ単に声を「画」に合わせるだけではなく、「想像力」を駆使して、制作陣の皆様が「画」をイメージしやすくなるように「声をあてる」ことも大事です。
【仕事2】吹き替え
海外の映画やドラマに声をあてる仕事が「吹き替え」です。
「外画収録」ともいいます。
この「仕事」も「アニメの仕事」と並んで案件数の多い仕事となります。
こちらはまた「アニメ」とは違った技術が必要になります。
それは「声をあてる技術」と「演技力」です。
「吹き替え」というのは「完全に出来上がっている映像に声をあてる」ことになります。
実際の俳優の声(原音)を聞きながら、口に合わせてセリフを話し、その演技に合わせた演技をしなければなりません。
しかも作品によって「英語」もあれば「ポルトガル語」に「フランス語」、「中国語」に「韓国語」など「原音の言葉」も「口の動き」も国ごとに全く異なります。
ココに注意
なにより「原音」を耳で聞きながら、台詞を言い、演技をするといった作業を同時にこなさなければいけないので考えていたら全てが間に合いません。
考えないで出来るようになるまで、何回も何回も練習して感覚で覚えていくしかない「仕事」。
それが「吹き替え」です。
【仕事3】ナレーション
バラエティ番組や情報番組、そしてドキュメンタリー番組にニュース番組など、番組を進行したり、合いの手を入れたりする「仕事」が「ナレーション」です。
この「ナレーション」をする人を「ナレーター」と呼びます。
「声優」やるなら目指すは「ナレーター」ということで「声優陣」の中でも「ナレーター」を目標にしている方も多くいます。
「ナレーション」で重要視されるのは「空気作り」です。
「バラエティ番組」なら「バラエティ色」を出し、明るく楽しい空気を作る。
「ドキュメンタリー番組」なら正しく物事を伝えるように誠実な空気を作る。
このように視聴者に「番組の空気」や「雰囲気」を言葉に乗せてわかりやすく伝えられるか否かが大事なポイントになります。
ココがポイント
その大事なポイントである「番組の空気」、「雰囲気」を作るために、まずしなければいけないこと、それは「自分の空気」を作り上げることです。
「ナレーション収録」は「アニメ」や「吹き替え」など「キャスト陣全員」で収録する現場と違って、「自分一人」で収録します。
ブース内に一人でいる時のプレッシャーは相当なものです。
そのプレッシャーに飲み込まれたら最後、自分の力を発揮できることなく全てが終わります。
そうならないようにブース内を「自分の空気」にすることが大切なのです。
いわば「精神統一」みたいなものでしょうか。
また「ナレーション収録」は当日その場で原稿を渡されることが少なくありません。その場合は映像もその時に初めて見ることになります。
※もちろん事前に台本や映像をいただける場合もあります。
プロデューサー、ディレクターの意向を聞き入れ、自分の空気、番組の空気を作り、初めて見る映像に合わせて、初めて見る原稿を読む。
これだけで頭がパンクしそうですが、大丈夫です。
普通に出来る人がいるのだから、努力すればきっと皆様も出来ます。
ただし、台詞を話す演技とは違って、言葉だけで番組を進行していくので、アクセントや発音など基本的な部分ができていない場合、その弱い部分が顕著にあらわれてしまいます。
基本的な部分は今のうちからしっかりと叩き込んでおきましょう。
【仕事4】CMナレーション
様々な企業が自社製品を世間に知ってもらうためにテレビやラジオで放送する「コマーシャル」。
ここにも「声優」の仕事が存在します。それが「CMナレーション」です。
出来不出来が利益に直結するため、
企業の「CM」にかける熱意は半端なものではありません。
その「CM」に声をあてると言うことは、企業の代表に選ばれたも同然です。
ただし、代表に選ばれる人は限られます。
超難関のオーディションで勝ち残った人。
「アニメ」、「吹き替え」、「ナレーション」で自分の価値を高め、業界や世間に認められた人。
そういった人だけが「CM」に声を吹き込むことができるのです。
「俳優」や「タレント」も「CM」は他の仕事とは別物と言いますが、「声優」にとっても同じです。
「CM」に起用される=今現在「人気がある声優」もしくは「実力がある声優」といっても過言ではないでしょう。
選んでいただけるよう日々精進。これしかありません。
【仕事5】MC・司会
「ゲームイベント」や「アニメイベント」、「ドラマCDイベント」などなど毎日あちらこちらで「声優」のイベントは行われています。
そんなイベントのMC、司会をこなすのも「声優の仕事」になります。
「イベントMCの仕事」は生ライブです。
そして生ライブということはイベント会場に時間制限があるということです。
イベントMCは時間どおりに閉会できるように様々な状況判断をしながら、イベントを進行させていかなければいけません。
ココに注意
それもただ進行していくだけではなく、出演者とうまく掛け合いながら、観客を盛り上げつつ、イベントを進行するという高難度なスキルが求められます。
「今は盛り上がっているから次のコーナーへ行くのはもう少し待とう。」。
「盛り上がりにかけてきたので、次へ行こう。」など、この仕事はとにかく柔軟性が求められます。
会場や出演者の空気を適切に判断し、その瞬間に最も正しい進行を読める人。
なによりも生でファンと触れ合えることを楽しめる人。
イベント出演者を引き立てながら自分も目立つことができる人。
そういった人が「MC・司会の仕事」に向いています。
頭の回転の速い人が選ばれやすい仕事です。
「この作品のイベントを開催する時の司会はこの人しかいない!」。
ということから、先のイベントを見据えて作品にキャスティングされる方も多くいます。
仕事をもらうためには日々の努力!
この先、「声優」の仕事の幅は確実に広がっていきます。
ですが、今回ご紹介した「5つの仕事」を念頭に入れて自分を鍛えておけば、どんな「現場」にも必ず対応できるはずです。
土台がしっかりしていれば倒れることはありません。今のうちからしっかりと土台を作り上げていきましょう。