声優という職業はいつごろからあったのでしょうか。
実は、声優という言葉が一般的に広まったのはかなり昔の時代です。
声優になりたい方は、声優の歴史も知っておきましょう。
今回は声優の歴史について紹介していきます。
1)声優っていつから「声優」と呼ばれるようになったの?
(i.ytimg.comより引用)
【1】もともとは役者の卵
声優という言葉が一般的に広まったのは最近のことです。
声優はもともと役者の卵がやっていたというのは有名な話ですね。
役者は今もそうだと思いますが、新人役者の時代は下積みで、食べていくための方法があまりなかったのです。
そこで、役者修業も兼ねて海外ドラマや映画の吹き替えをするアルバイトのようなものでした。
そのため、役者に比べて1ランク下の職業だと認識しているご年配の方も多いです。
そのため「声優」という名称で呼ばれることを嫌い、声優をやっていることを恥じる、声の仕事をしていることを黒歴史として語る方もいます。
「声優ではなく役者だ」という主張も今なお残っているのです。
【2】日本で初めての声優は誰なの?
声の出演として仕事になったのは、1925年4月のことです。
NHKの前身である社団法人東京放送局がラジオ放送を開始し、「映画劇せりふ」の番組内でサイレント映画「大地は微笑む」のセリフ劇が放送されました。
この時の声の出演は新派劇俳優の井上正夫さん、女優の栗島すみ子さんなどでした。
声優の仕事としては「ラジオドラマ」が最初ってことだったんですね。
1941年にはNHKでラジオドラマ専門の俳優を養成する東京中央放送局専属劇団俳優養成所の研究生を公募します。
これが声優養成所の前身ということですね。
「声優」という言葉はこのころから使われたとする資料もあります。
しかし、実際はより古く、読売新聞では1926年から使用されていたようです。
【3】プロの声優として初めて生業とした人
プロの声優の定義はいろいろですが、「声の仕事を生業にした人」をプロと呼ぶのであれば、「ぶらり途中下車の旅」のナレーターで有名な滝口順平さんだと言われています。
1953年に地上波のTV放送が始まります。
1956年に「カウボーイGメン」という海外ドラマが放送され、生放送で吹き替え全役を一人で演じたのが滝口順平さんです。
考えられますか?「生放送で全役」ですよ!
2)ベテラン声優の歴史
【1】昔のアニメは生放送!
先ほど滝口順平さんの話にも出ましたが、TV放送は昔はすべて生放送でした。
例えば、30分のTVアニメの場合だと、30分間ずっと生で声をあてるわけです。
集中力も必要ですし、滑舌で噛んだりしても止まるわけではありませんでした。
仕事内容も、アニメの仕事ではなく、映画の吹き替えが声優の主な仕事内容です。
このころの声優は「吹き替えタレント」と呼ばれていました。
【2】その後収録することができるように・・・
1958年にはアニメを録画して放送するアフレコが本格化します。
生放送での声当てではなくなります。
ただし、収録するフィルムは高価なものであったことと、編集技術も発達していなかったため、1番組を通して収録するというものだったのです。
当然誰かひとりでも滑舌が悪くてかんでしまった場合は、最初から録り直しです。
先輩声優さんたちに囲まれた新人声優さんは戦々恐々だったに違いありませんね。
筆者の恩師、勝田久先生もこの時代を経験された1人です。
【3】編集ができるようになったのは最近
もともとアニメは紙芝居を元にし、パラパラ漫画の原理を用いて制作されていました。
収録後編集して放送するようになったのは、比較的最近のことです。
例えセリフを失敗してしまっても録り直し、編集して繋げられるようになったので、スタジオの緊張感が緩和されたことは間違いないでしょう。
しかし、それでも、共演者やスタッフさんにも迷惑をかけるという点は変わりませんので、セリフの失敗はないに越したことはないですよね。
3)現在の声優は原点回帰?
【1】声優から俳優へ
テレビ放送でアニメブームが到来した時代は有名な映画俳優やTV俳優が声優の仕事をすることはありませんでした。
声優になった人たちは、売れない舞台俳優が仕方なく仕事を担っていたのです。
TVや映画に出る俳優さんは売れっ子という立場で、ギャラの問題で声をあてるという仕事はほとんどしていませんでした。
現在でも声優の仕事を続けているベテラン声優さんは、劇団出身の方が数多くいます。
【2】声優の仕事は多岐にわたる
現在の声優は、TVへの出演、ラジオパーソナリティ、ライブなどアーティストとしての活動、仕事も多くあります。
ただこの声優の仕事の広がりは今に始まったことではありません。
声優という職業ができた1025年のラジオドラマブームのころには、声優はマルチな活躍をする人もいたのです。
それでも、アニメ30分の収録を3、4時間くらい、レギュラー陣での収録なら2時間で完了させてしまうプロの声優の技術には驚愕します。
しかもアニメの収録は線画で、キャラクターの絵は入っていない状態での収録です。
台本もその日にもらい、2回テストをしてすぐに本番の収録です。
これは職人技ですよね。
【3】俳優から声優へ
アニメ、外画ともに、俳優さんが声優として仕事をすることも多くなりました。
ファンの中には俳優が声優として仕事をすることを悪く言う人もいます。
でも、「声優は役者」なのですから、不自然なことでもないですよね。
俳優がアニメの声優をやって、いまいちだと思われるのは、単純に演技が下手なだけなんだと思います。
声優としていまいちなのではなく役者としていまいちということでしょう。
4)未来の声優業界をズバリ予測!!
・・・ということで、未来の話をしよう。
【1】アニメの制作費は減少して声優の仕事がなくなる?
今後の声優業界はどうなっていくのでしょうか。
現在TVを観る人工が減少し、アニメの視聴率も下がっています。
スポンサーあっての番組ですから、アニメの制作費がさらに減少することは必然です。
その場合、ベテラン声優で番組を制作するほうがリスクは減ります。
下手に新人声優を起用して、外れた場合のリスクを背負いたくはないのが本音でしょう。
またランカーになった声優は余程いいコネクションがないと売れっ子になるのは難しいと予想します。
声優も横並びになり、実力の他に運も大きく影響することは間違いありません。
【2】声優も芸能人として活躍する
声優としての仕事ではなく、一芸能人としての出演も多くTVで見かけるようになりました。
容姿を生かして、バラエティ番組や報道番組など露出する仕事が多くなってきたように思います。
売れっ子声優は、芸能人として活躍することが当たり前の時代になるでしょう。
若い声優さんの場合は、アイドルとしての売り出しもどんどん増えます。
ただし、実力がなく、アイドル声優だけの活動で声優をやっていた人は、時代が進むと仕事がなくなることになります。
ココがポイント
若いうちから実力をしっかりつけておくことが声優を続けられる鍵になるのです。
【3】インターネットでの声優の活躍
Vtuberの記事でもご紹介しましたが、新しい声優の仕事は増えます。
インターネットの動画ではTVに比較すると、製作費は格段に安くなります。
ゲームアプリなどもそうですね。
そのため、新人声優の主な仕事がインターネットでの声の出演となっていくでしょう。
事務所に所属しないフリーの声優もさらに増えていくと予想します。
その中で、売れている、ファンが多くなるとCS放送のアニメ、さらに地上波のアニメの出演というように、出世の道になる可能性があります。
ただし、インターネットのメディアに、今度はベテランが進出する可能性も十分にあります。
ファンは正直ですから、新人声優にとっては厳しい時代になるでしょう。
まとめ
筆者が声優を目指し始めたころもすでに声優志望者はたくさんいました。
TV放送が始まる前のラジオドラマ時代にも、NHK東京放送劇団の公募では、定員10名に対し応募者数6000人だったそうなので、今の時代も、昔も声優になるには大変なのは変わりないようですね。
下積み時代はどの時代でも厳しいものですが、「継続は力なり」です。
辛くても、続けていれば夜明けがくるかもしれません。